くれぬ笠きて草鞋はきながら
 冬ごもり[#「冬ごもり」は枠囲み] 冬ごもりまたよりそはむこの柱
□月と緑平と私と酒。
□鼠のゐない家[#「鼠のゐない家」に傍点]、[#「鼠のゐない家[#「鼠のゐない家」に傍点]、」は底本では「鼠のゐない家、[#「のゐない家、」に傍点]」]油虫[#「油虫」に傍点]は[#「油虫[#「油虫」に傍点]は」は底本では「油虫は[#「虫は」に傍点]」]私を神経衰弱にする。
□簑虫よ、簑虫よ。
□炬燵といふもの。
 日本家屋、日本国土、日本人。
□妙な夢のいろ/\。
□音立てずして、しん/\として燃ゆる火[#「しん/\として燃ゆる火」に傍点]。
□小さくとも完いもの[#「小さくとも完いもの」に傍点]、[#「小さくとも完いもの[#「小さくとも完いもの」に傍点]、」は底本では「小さくとも完いもの、[#「さくとも完いもの、」に傍点]」]大きくて完からざるものよりも。
 俳句――俳句的――俳句性
□与へるもののよろこび、与へられるものゝさびしさ。
[#ここで字下げ終わり]

 十二月十一日[#「十二月十一日」に二重傍線] 晴れたり、曇つたり。

酒一升借りて、肴をちよつぴり買うて、樹明君と一杯やらうと思ふ、お互に慰め合ひたい、樹明君は当面のマイナス難を忘れ、私は連夜の不眠を紛らさう。
今日は郵便やさんは来ないのか、さびしいなあと独語してゐたら、正午のサイレンが鳴つてから、やつてきた、いろ/\のたよりを持つて、――うれしかつた。
待つて、待つて、待ちくたぶれてゐるところへ樹明君がやつてきた、さつそく飲む食べる話す、……私は待ちきれないで、待つ身につらき置炬燵で一本ひつかけてゐたが、――ほどよく酔うて、街を歩いて、ほどよく唄うて、別れて戻つて、ぐつすり寝た。

 十二月十二日[#「十二月十二日」に二重傍線] 小春日和、まことに日々好日だ。

昨夜の残酒残肴で、朝からほろ酔機嫌!
裏山の雑木がもみづいて、しんみりと朝日を浴びてゐる、いゝね、いゝね、ひとりで眺めるには惜しい。
身辺整理、必要な物以外は身辺に置かないのが私の持前だ、古い手紙やハガキを燃やして湯を沸かす!
緑平いよ/\緑平[#「緑平いよ/\緑平」に傍点]、といふ題で彼の人物と作品とを評すべく、いろ/\考へる。
私も私自身に少しづつ自信[#「自信」に傍点]が持てるやうになつた、自分の作品を愛するやうになつ
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