、とても乗れない)。
ガソリンカアの快さよ、逢ひにゆくにも飲みにゆくにも!
田舎の娘さんのハイカラぶりはあまりよくありませんね、ゼイタクは一しほみじめですよ。
マダムはシヤン、お嬢さんはスベタ、まことにお気の毒なことですが。
湯田はよいとこ。……
千人風呂五銭の享楽!
檻の猿[#「檻の猿」に傍点]、それをいつまでも見てゐる人々。
ボロ着て涼しく[#「ボロ着て涼しく」に傍点]、安らかで朗らかで。
湯あがりの肌へ雨のかゝるも悪くない。
さみだれて濁り湛へた水(といつても差支あるまい)からぼちやんと跳ねては大鯉のあそび。
梅雨のやうな土用、しかし鰻は、せめて鰌でも食べたいものですね。
糸米の山口が今日は殊によかつた、山口の山はうつくしい、含蓄[#「含蓄」に傍点]があつて親しみがある。
鱸のあらひ、鮒のあらひ、鮎の塩焼、いづれも結構だつたが、鮎はとりわけ有難かつた。
人の世に、死のさびしさ[#「死のさびしさ」に傍点]、生のなやみ[#「生のなやみ」に傍点]はなくなりません。
女よりも男、ビールよりも酒、海よりも山、樹よりも草、そして、――
N旅館の三助君、とても感じがよかつた、そして二人の仲居さん、あまり感じがよくなかつた。
Y子さんは女性としての媚態を持つてゐない、そこがよいと思つた、彼女自身のためにはよくあるまいけれど。
[#ここから2字下げ]
・道がまつすぐ大きなものをころがしてくる
・よい雨が音たかくふる、これで十分
・かうして暮らして何もかも黴だらけ
・山のみどりを霧がはれたりつつんだり
・うれしい朝の、かぼちやの大きい花かな
赤い花が、墓場だつた
あつい温泉《ユ》が湧いてのうせんかつらの花が咲いて
おぢいさんは高声で、ふんどしのあとも
・濡れて歩いてしよんぼり昼顔
・けふは飲めるガソリンカアで行く
むしあつくやつとホームイン(対校試合)
・こんやの最終は満員でバスガールはうたひつつ
・月へうたふバスガールのネクタイの涼しく
[#ここで字下げ終わり]
七月廿七日[#「七月廿七日」に二重傍線]
晴、土用だからしつかり照つてくれ。
蝉捕の児が三々五々やつてくる、うれしくもあればうるさくもある、私はやつぱり薄つぺらなヱゴイストだ。
午後、樹明来庵、魚と米とを持つて、そして昼寝して晩飯をたべて、おとなしく帰宅。
今日はアルコールなし。
△読書、思索、人間には自
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