[#「餅」に白三角傍点]といふものは――
[#ここで字下げ終わり]
十二月廿二日[#「十二月廿二日」に二重傍線] 曇、をり/\しぐれる、ぬくすぎる。
机上の一輪※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]に梅一枝を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]す、まだ/\蕾はかたい。
身辺整理、整理しても整理しても整理しきれないものがある。……
餓えたる油虫[#「餓えたる油虫」に傍点]! 彼に人間を観た!
夜は雨、不眠、読書。
十二月廿三日[#「十二月廿三日」に二重傍線] 雨、曇、晴、夜はあたゝかい月あかり。
いつでも死ねる[#「いつでも死ねる」に二重傍線]――いつ死んでもよい覚悟と用意とを持つてゐて、生きられるだけ生きる安心決定で生きてゆきたい。
かりそめの干柿を味ふ、うまい、捨てられた柿だつたが。
伊東さんが送つてくれた中外日報[#「中外日報」に傍点]を読む、年来の愛読誌であるが、涙骨老に改めて敬意を表する。
今夜も眠れなかつた、ランプの油が乏しいから、月あかり街あかりする寝床の中で考へつゞけた。……
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・きら/\ひかつて売り買ひされるよう肥えた魚
孫の手をひきお寺まゐりのさげてゐるはお米
・月からこぼれて師走の雨のぬくい音
・触れると散るまへの櫨紅葉かな
其中一人にして冬ごもり
・小春日のさせば障子をあるく虫のかげ
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十二月廿四日[#「十二月廿四日」に二重傍線] 晴、めつきり冬らしい寒さとなつた。
安静、感謝、知足安分の心境。
健がボーナスのお裾分をしてくれたので、さつそく払へるだけ、払ふべきものは払ふことが出来た、そして買物もあるし、温泉にも浸りたいので、山口へまで出かけたが、からだのぐあいが悪くて、ほんたうに閉口した、いつも食べる二十銭の定食も食べたくなかつた、ほどよい宿に泊つてもいゝのだが泊りたくなかつた、おそくなつて、やつと帰庵して、すぐ寝た。……
冷酒をあほつたからであらう、餅菓子を食べたからでもあらうか、……とにかく弱つた、……老衰をひし/\と感じた、感じないではゐられなかつた、……そして考へたことである、山頭火は其中庵にぢつとしてゐるより外はない[#「山頭火は其中庵にぢつとしてゐるより外はない」に傍点]、口腹の慾を断ち、人間の
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