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六月十三日[#「六月十三日」に二重傍線]
六月十四日
身心も梅雨季だ、寝る、寝るより外ない!
寝る、寝る、寝るよ。
大村君が不意来庵、しばらく話す、樹明君へ手紙を托して米を送つて貰ふ。
夕、樹明来庵、庵の空気の険悪なのに避[#「避」に「マヽ」の注記]易して直ぐ帰つてしまつた!
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・梅雨空おもく蜘蛛と蜂とがたたかふ
・焼かれる虫のなんと大きい音だ
・頬白がよう啼いて親鳥子鳥
・何もないけどふるさとのちしやなます(砂君に)
・話しても話しても昔話がなんぼうでもとんぼ通りぬけさせる
こんな句も
・けさも二人でトマト畑でトマトをたべる(新夫婦に)
(一人ならば私だ!)
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六月十五日[#「六月十五日」に二重傍線]
空も私もすこし晴れてきたが、……放下着。
筍によき/\、うまいなあ。
やつと層雲句稿を送つた、ほつとした。
シヨウチユウ! いけなかつた、破戒の罰はテキメンだつた。Yさんにもすまなかつた、樹明君にもすまなかつた、とう/\二人で酔つぱらつて、M旅館に酔ひつぶれてしまつた、……何といふダラシなさだらう!
六月十六日
六月十七日
六月十八日
こん/\と寝た、寝る外ないのだ!
六月十九日[#「六月十九日」に二重傍線]
……ヨリいけなくなつた、……シヨウチユウの誘惑、泥酔の醜態。……
放下着する外ないとすれば、行乞流転のくりかへしか、それとも自殺のハカナサか。……
衝動性変質者[#「衝動性変質者」に傍点]のみじめさ。
樹明君に謝し、同時に戒めます、あんたもあぶない!
六月廿日
今日から断食[#「断食」に傍点]、いや、絶食[#「絶食」に傍点]。
六月廿一日
夕方だしぬけに金井三郎さん来庵、対談一時間あまり。
お茶もあげなかつた、すまなかつた。
お土産として、日本魂[#「日本魂」に傍点]の二合罎[#「罎」に「マヽ」の注記]を戴く、胡瓜をもいできてさつそくに飲む、酒はうまいけれど、……あゝ。
六月廿二日[#「六月廿二日」に二重傍線]
晴、身心やつと落ちつく、ちつとも睡らないで、四時には起きて身辺整理。
時計をマゲテ――マゲルほどの品ではないが――それで米を買ふ。
三日ぶりにオマンマにありついたのである。
米は安い、酒は高い。
先日来の自分を反省して悲憤やる方なかつた、馬鹿、阿呆、頓間、間抜。
死に[#「に」に「マヽ」の注記]も死ねないやうになりつゝあつたのだ、情ない。
樹明君が死にそこなつた私を案じて給仕をよこした、ありがたい志だつた。
△暴風一過の境地[#「暴風一過の境地」に傍点]である。
いぬころぐさを活ける、去年をすぐおもひだす、おどり子草も咲いてゐる、すぐまた一昨年のことをおもひだす。……
ぐみの実、草いちごの実、おもひでがあまりに多い。
虫が鳴く、こうろぎよ。……
虫が歩く、油虫だ。
△近眼と老眼とがこんがらがる、躓き易くなつて老を感じる。
………………………………………………………
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・ま昼の花の一つで蝶々も一つで
・かどは酒屋で夾竹桃が咲きだした
・朝風の草の中からによこりと筍
・ゆふ空ゆたかに散りくるはあざみ
・ほんに草の生えては咲く(改作)
うらは藪で筍によきによき(其中庵風景)
・水田たたへてつるみとんぼがゆふ日かげ
・雲雀が空に親子二人は泥田の中
・鍋や茶碗や夜つぴて雨が洗つてくれた
かういふ句も
抱かうとして夜の雨ふる
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六月廿三日[#「六月廿三日」に二重傍線]
昨夜もよく睡れなかつたので、何となく身心が重苦しいけれど、落ちついたことに間違はない。
学校に樹明君を訪ねて、先夜のお詑とお礼とをいふ、君はまつたく病人だつた、身心共に。
△酒はよいが、アルコールがいけないのだ、人そのものは申分ないのに意志が弱いのだ。
君よ、しつかりして下さい、私もしつかりと生活する。
空[#(ラ)]梅雨の暑苦しさ[#「空[#(ラ)]梅雨の暑苦しさ」に傍点]、それは私たちの身心のやうな!
放下着、そしてまた放下着。
行雲流水、無礙無作、からりとして生きて行け。
田植がはじまつた、毎日、朝から晩まで泥田を這うて働らく人々に対して、私は恥づかしく思はないではゐられない。
豚が食べてゐる、クン/\鼻を鳴らして――豚は食慾そのものであるやうに感じさせる、食べて肥えて、そして殺される豚だ。
雀の子がうまく飛べない、畦から畦へと餌をあさつてはゐるが――多分、彼はみなしご[#「みなしご」に傍点]だらう。
夕方、ばら/\と降つた、なか/\降らない梅雨だ。
風呂を飲んでしまつた、澄太君に申訳がない、どうでもかうでも風呂代だけは捻出して、その野風呂にはいつて貰はな
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