ぱり案じた通りだつたらしい、樹明君よ、独りで呷る酒はよくない、さういふ酒から離れて下さい、頼みます。
夕方、みんな別れる、私はまた一人となつて月を眺めた、今日はまことにしめやかな一日であつた、酒なしの、おいしい御飯をたべたゞけでも。
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 日の照る若葉はゆらぐともなく
・草の葉ふかくきり/″\すのをさなさよ
・ぢつとしてたんぽゝのちる
・放たれて馬にどつさり若草がある
・夏山のせまりくる水をくみあげる
・からころ/\水くみにゆく
・月あかりの筍がつちり
・蕗の葉の大きさや月かげいつぱい
・月のあかるい別れ姿で
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 五月八日[#「五月八日」に二重傍線]

曇、暑くもなく寒くもない、まさに行乞日和。
草花を見まはる、やつぱり秋田蕗がよいな。
九時頃から四時頃まで嘉川行乞、まことに久しぶりの行乞だつた、行乞相も悪くなかつた。
嘉川は折からお釈迦様の縁日、たいへんな人出、活動写真、節劇、見世物、食堂出張店、露店がずらりと並んでゐた、どの家でも御馳走をこしらへてお客がゐた、朝から風呂も沸いてゐた、着飾つた娘さん、気取つた青年が右徃左徃してゐた、その間
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