、酒に求め[#「求め」に傍点]ないで、酒を味ふ[#「味ふ」に傍点]やうにならなければウソですね。
ちよいと出かけて、ちよいと一杯。
夕方、帰途、樹明来、さびしい顔で酒が飲みたい、飲まずにはゐられないと訴へる、が、私は今や八方塞がりのどうすることも出来ない、もじ/\してゐると、君が一筆書いた、それを持参して一升借りて戻る、――悪い酒ではなかつたが寂しい酒だつた、あゝ、三人でうれしい酒を飲みたい!
四月廿七日[#「四月廿七日」に二重傍線]
晴、冷、このあたりでは苗代風といふ。
昨夜も飲みすぎ食べすぎ、そしてまた朝酒。
雑木を雑草に活けかへる。
散歩、――新国道を嘉川まで、釈迦寺拝登、御開扉会、帰途は山越、白い花をつけた雑木がよかつた。
初めて燕を見、初めて蚊に喰はれた。
雀、蜂、蟻、庵をめぐつて賑やかなことである。
蕗のうまさ、ほろにがい味は何ともいへない。
樹明君来庵、春風微笑風景を展開した。
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・青空の筍を掘る
・春山の奥から重い荷を負うて鮮人
・蕗のうまさもふるさとの春ふかうなり
[#ここで字下げ終わり]
四月廿八日[#「四月廿八日」に二重傍線]
け
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