れ菜の花
・すこし寒い雨がふるお彼岸まゐり
・夜ふけの風がでてきてわたしをめぐる
・触れて夜の花のつめたし
・夜風その奥から迫りくるもの
・こやしあたへるほそいあめとなり
[#ここで字下げ終わり]
三月十九日[#「三月十九日」に二重傍線]
すつかり春だ。
増[#「増」に「マヽ」の注記]富黎々火さんが大山澄太さんと打合せてをいた通りに来庵、またお土産沢山、――味噌、塩昆布、蒲鉾。
大山さん自身出かけて、酒と酢と豆腐とを買うてくる、どちらがお客さんだか解らなくなつた。
樹明君もやつてくる、其中庵稀有の饗宴がはじまつた。
よい気持で草原に寝ころんで話した、雲のない青空、そして芽ぐみつゝある枯草。
道に遊ぶ者[#「道に遊ぶ者」に傍点]の親しさを見よ。
夕方、それ/″\に別れた、私は元の一人となつた、さみしかつた、さみしくなければ嘘だ。
夜、樹明君再来、何だか様子が変だつた、私も少々変だつた。
風を聴きつゝ、いつしか寝入つてしまつた。
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・こゝからがうちの山といふ木の芽
石に蝶が、晴れて風ふく
□
春風の鉢の子一つ
[#ここで字下げ終わり]
┌厳陽尊者、一物不将来の時如何。
│趙州和尚、 放下着。
┤
│厳―――、一物不将来、箇の什※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]をか放下せん。
└趙―――、擔取し去れ。
『山はしづかにして性をやしなひ、水はうごいて情をなぐさむ』
底本:「山頭火全集 第四巻」春陽堂書店
1986(昭和61)年8月5日第1刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※複数行にかかる中括弧には、けい線素片をあてました。
入力:小林繁雄
校正:仙酔ゑびす
2009年1月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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