て雑木もみぢやひよ鳥や
旗日の旗は立てて村はとかくおるすがち
村はるすがちの柿赤し
山みち暮れいそぐりんだう
こんなに草の実どこの草の実(改)
しぐるるあしあとをたどりゆく
トンネル吹きぬける風の葉がちる
しぐれてぬれて旅ごろもしぼつてはゆく
しぐれてぬれてまつかな柿もろた
しぐるるほどは波の音たかく
大|魚籠《ビク》さかさまにしぐれてゐる
濡れてはたらくめうとなかよく
しぐれて人が海をみてゐる
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 十一月四日 雨、風、行程六里、甲ノ浦、三福屋。

雨中出立、そして雨中行乞(今日、牟岐町で、初めて行乞らしく行乞した)、雨が本降りになった、風が強く吹きだした、――八坂八浜[#「八坂八浜」に傍点]を行くのである、風雨のすきまから長汀曲浦を眺めつつ急ぐ、鯖大師堂に参詣する、風で笠を吹きとばされ、眼鏡もとんでしまって閉口していたら、通りがかりの小学生が拾ってくれた、ありがとうありがとう、雨いよいよしげく、風ますますすさぶ、奥鞆町で泊るより外なくなったが、どの宿屋でも泊めてくれない、ままよとばかり濡れ鼠のようになって歩きつづける、途中どうにもやりきれなくなり、道べりの倉庫の蔭で休んだ、着物をしぼったりお昼をたべたり、二時間ばかりは動けなかった。
どしゃぶり! まったくそうだった、そしてそれを吹きまくる烈風、雨が横さまに簾のようになってそそいだ、私は天からたたきつけられたように感じた[#「私は天からたたきつけられたように感じた」に傍点]、むしろ痛快[#「痛快」に傍点]だった。
暮れちかく宍喰町まで来たには来たが、また泊れない、ようやく甲ノ浦まで来て、ようやく泊めて貰うことが出来た、ありがたかった、よい宿でもあってうれしかった、同宿に気むつかしい病人がいていやだったが。
 宿のおばさんがお祭の御馳走のお裾分だといって、お鮨を一皿おせったいして下さった、おいしかった、私も今夜は二杯傾けた。……
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野宿いろ/\
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波音おだやかな夢のふるさと
秋風こんやも星空のました
落葉しいて寝るよりほかない山のうつくしさ
生きの身のいのちかなしく月澄みわたる
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いつぞやの野宿を
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わがいのちをはるもよろし
大空を仰げば月の澄みわたるなり
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留置郵便はうれしいありが
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