ば私は我と我が身を持ち倦んでいるのです、丁度、気の弱い母親が駄々ッ児の独り息子を持て余していますように、
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我に小《ち》さう籠るに耳は眼はなくも
   泥田の田螺|幸《さち》もあるらむ
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 突然ですが、少しく事情があって当分の間、俳句、単に俳句のみならず一切の文芸に遠ざかりたいと思います、随って名残惜しくも、皆様と袖を分たねばなりません、今年は子の年ですから、仁木の鼠みたいに、また出直して来るつもりではありますが、一応お別れします、色々御厄介になりました、皆様、御機嫌よう。
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毒ありて活く生命にや河豚汁
        一月十八日午前十時
             田螺公 謹んで申す
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[#地付き](椋鳥会五句集『河豚』明治四十五年一月)



底本:「山頭火随筆集」講談社文芸文庫、講談社
   2002(平成14)年7月10日第1刷発行
   2007(平成19)年2月5日第9刷発行
初出:「椋鳥会五句集『河豚』」
   1912(明治45)年1月
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2008年
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