た、これで、木賃料三十銭とは!
こゝろよく酔うて話がはづんだ。
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山ふところの花の白さに蜂がゐる
松風松蝉の合唱すゞし
こゝがすゞしい墓場に寝ころぶ
河の向岸は遊廓、家も女も
田園情趣ゆたか
・水をへだてゝをなごやの灯がまたゝきだした
をとこがをなごに螢とぶ水
今日の行乞所得
米 一升三合
銭 三十八銭
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落葉石[#「落葉石」に傍点]のおもひで(周陽時代)
六月四日[#「六月四日」に二重傍線]
昨夜は興に乗じて焼酎を飲みすぎたので胃の工合はよくないけれど、ぐつすりと眠れたので気分は軽い。
行程六里、厚狭行乞。
山に陽が落ちてから黎々火居へ落ちつく、心からの歓迎をうけた、ありがたかつた。
近来にないうまい酒うまい飯であつた。
ずゐぶんたくさん水を飲んだ。
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飲みすぎの胃袋が梅雨ちかい空
おべんとうひろげるまうへから陽がさす
・水もさつきのわいてあふれる
女房に死なれて子を負うて暑い旅
若竹がこまやかなかげをつくつてゐた
黎々火居二句
夜もふけた松があつて蘭の花
盛花がおちて
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