はかういふ風でなければならない、ありがたい/\。
六月二日 同前。
雨、そして関門地方通有の風がまた吹きだした、終日、散歩(土地を探して)と思案(草庵について)とで暮らした。
午後、小串へ出かけて、必要缺ぐべからざるもの[#「必要缺ぐべからざるもの」に傍点]を少々ばかり買ふ。
山ほとゝぎす、野の花さま/″\。
老慈師から、伊東君から、その他から、ありがたいたよりがあつた。
隣室の奥さん――彼女はお気の毒にもだいぶヒステリツクである――から御馳走していたゞいた。
自己を忘ず[#「自己を忘ず」に傍点]――そこまで徹しなければならない。
こゝはうれしい、しづかにしてさびしくない[#「しづかにしてさびしくない」に傍点]。
だん/\酒から解放される、といふよりもアルコールを超越しつゝある、至祷至祝。
緑平老から貰つた薬を、いつのまにやら、みんな飲んでしまつた、私としては薬を飲みすぎる、身心がおとろへたからだらうが、とにかく薬を多く飲むほど酒を少く飲むやうになつたわい。
昨夜はよく寝られたのに、今夜はどうしても眠れない、暁近くまで読書した。
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家をさがすや山ほとゝぎす
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