―しかし飲まないより飲んだ方がうれしい、吸はないより吸ふた方がうれしい、何となくさみしいとは思ふのである。
南無緑平老如来、御来迎を待つ!
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妙青禅寺
もう山門は開けてある
梅雨曇り子を叱つては薬飲ませる
子猫よ腹たてゝ鳴くかよ
子をさがす親猫のいつまで鳴く
仔牛かはいや赤い鉢巻してもろた
三恵寺
樹かげすゞしく石にてふてふ
迷うた山路で真赤なつゝじ
牛小屋のとなりで猫の子うまれた
・家をめぐつてどくだみの花
働きつめて牛にひかれて戻る
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今日は句数こそ沢山あるが、多少でも自惚のある句は一つもない、蒼天々々。
どうやら寺領が借れるらしい、さつそく大工さんと契約しよう、其中庵まさに出来んとす、うれしい哉。
六月十四日 同前。
晴、朝の野べから青草を貰つてきて活ける、おばさんから貰つて活けてをいた花は、すまないけれど、あまり感じよくないから。
青草はよい、葉に葉をかさねて、いき/\としてゐる。
来信数通、みんなうれしいたよりであるが、殊に酒壺洞君、緑平老、井師からの言葉はうれしかつた。
返事を書かうと思つても
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