げ終わり]
先日来の句を思ひだして書いておかう。――
[#ここから2字下げ]
・湯壺から桜ふくらんだ
 ゆつくり湯に浸り沈丁花
    □
 寒い夜の御灯またゝく
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから1字下げ、折り返して7字下げ]
三月廿一日[#「三月廿一日」に二重傍線] 晴、彼岸の中日、即ち春季皇霊祭、晴れて風が吹いて、この孤独の旅人をさびしがらせた、行程八里、早岐の太田屋といふ木賃宿へ泊る(三〇・中)
[#ここで字下げ終わり]

少しばかり行乞したが、どうしても行乞気分になれなかつた、嬉野温泉で休みすぎたゝめか、俊和尚、元寛君の厚意が懐中にあるためか、いや/\風が吹いたゝめだ。
夕方、一文なしのルンペンが来て酒を飲みかけて追つぱらはれた、人事ぢやない、いろ/\考へさせられた、彼は横着だから憎むべく憐れむべしである、私はつゝましくしてはゐるけれど、友情にあまり恵まれてゐる、友人の厚意に甘えすぎてゐる。
[#ここから2字下げ]
・ふるさとは遠くして木の芽
[#ここで字下げ終わり]

 三月廿二日[#「三月廿二日」に二重傍線] 曇、暖か、早岐町行乞、佐世保市、末広屋(三五・中)


前へ 次へ
全150ページ中72ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング