で石風呂屋といふ、子供が多いので騷がしいけれど、おかみさんもおばあさんもしんせつなので居心がよい(三〇・中)
[#ここで字下げ終わり]
昨夜の宿は予想したほどよくなかつた(水だけは、筧から流れてくる水だけはよかつた)、しかし、期待したやうに山ほとゝぎすを聴くことが出来たのはうれしかつた。
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ほつかり眼ざめて山ほとゝぎす
・ほとゝぎすしきりに啼くやほとゝぎす
・あかつきの火の燃えさかる
□
・ふたゝび渡る関門は雨
・ぬれてうつくしいバナナをねぎるな
□
・シケの石風呂へはいりこむ
[#ここで字下げ終わり]
石風呂[#「石風呂」に傍点]は防長特有のものではあるまいか、その野人趣味を興ふかく思ふ。
ノミ、シラミ、アメ、カゼに責められて、なか/\寝つかれなかつた、落ちついて澄んでゆく自分を見詰めつゞけた。
長かつた夜が白みかゝつてきた、あかつきの声が心の中から響く、生活一新の風が吹きだした。
とにもかくにも、昨日までの自分を捨てゝしまへ、たゞ放下着[#「放下着」に傍点]!
底本:「山頭火全集 第三巻」春陽堂書店
1986(昭和61)年5月25日第1刷発行
1989(平成元)年3月20日第4刷
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※「騷」と「騒」の混在は底本通りにしました。
入力:さくらんぼ
校正:門田裕志、小林繁雄
2008年3月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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