句会、敦之、朝雄二句[#「句」に「マヽ」の注記]来会、ほんたうに親しみのある句会だつた、散会は十二時近くなり、それからまだ話したり書いたりして、ぐつすり眠つた、よい一日よい一夜だつた。
友へのたよりに、――長崎よいとこ、まことによいところであります、ことにおなじ道をゆくもののありがたさ、あたゝかい友に案内されて、長崎のよいところばかりを味はゝせていたゞいてをります、今日は唐寺を巡拝して、そしてまた天主堂に礼拝しました、あすは山へ海へ、等々、私には過ぎたモテナシであります、ブルプロを越えた生活とでもいひませうか。――
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長崎の句として
・ならんであるくに石だゝみすべるほどの雨(途上)
(だん/″\すべるやうな危険を持つてきた!)
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・冬曇の大釜の罅《ヒビ》(崇福寺)
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・寺から寺へ蔦かづら(寺町)
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・逢うてチヤンポン食べきれない(十返花君に)
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・すつかり剥げて布袋は笑ひつゞけてゐる(福済寺)
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・冬雨の石階をのぼるサンタマリヤ(大浦天主堂)
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二月五日[#「二月五日」に二重傍線] 晴、少しばかり寒くなつた。
朝酒をひつかけて出かける、今日は二人で山へ登らうといふのである、ノンキな事だ、ゼイタクな事だ、十返花君は水筒二つを(一つは酒、一つは茶)、私は握飯の包を提げてゐる、甑岩へ、そして帰途は敦之、朝雄の両君をも誘ひ合うて金比羅山を越えて浦上の天主堂を参観した、気障な言葉でいへば、まつたく恵まれた一日だつた、ありがたし、ありがたし。
昨日の記、今日の記は後から書く、とりあへず、今日の句として、――
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・寒い雲がいそぐ(下山)
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二月六日[#「二月六日」に二重傍線] 陰暦元旦、春が近いといふよりも春が来たやうなお天気である。
今日もたべるに心配はなくて、かへつて飲める喜びがある、無関心を通り越して呆心気分でぶらぶら歩きまはる、九時すぎから三時まへまで(十返花さんは出勤)。
諏訪公園(図書館でたま/\九州新聞を読んで望郷の念に駆られたり、鳩を見て羨ましがつたり、悲しんだり、水筒――正確にいへば酒筒だ――に舌鼓をうつたり……)。
波止場(出船の船[#「船」に「マヽ」の注記]、波音、人声、老弱男女)。
浜ノ町(買ひ
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