時々通つたが、歩く人には殆んど逢はなかつた)、然り而して、その馬鹿らしさを敢て行ふところに、悧巧でない私の存在理由があるのだ。
自動車で思ひ出したが、自動車は埃のお接待をしてくれる、摂取不捨、何物でも戴かなければならない私は、法衣に浴せかけられた泥に向つても合掌しなければならないのだらう。
今日の特種としては、見晴らしのいゝ路傍に蹇車を見出した事だつた、破れ着物を張りまはした中から、ぬつと大きな汚ない足が一本出てゐた(その片足は恐らく見るかげもなく頽れてしまつてゐるのだらう)、彼は海と山との間に悠々として太平の夢を楽しんでゐるのだ、『おい同行さん』とその乞食君(私としては呼び捨てには出来ない)に話しかけたかつたが彼の唯一の慰めともいふべき睡眠を妨げることを恐れて、黙つて眺めて通り過ぎたが。
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 泊めてくれない村のしぐれを歩く
 こゝろつかれて山が海がうつくしすぎる
 岩のあひだにも畠があつて南瓜咲いてる
・波音の稲がよう熟れてゐる
・蕎麦の花にも少年の日がなつかしい
 労れて足を雨にうたせる
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 十月二日[#「十月二日」に二重傍線] 雨、
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