り/″\に面白かつた、殊に宇部の乞食爺さんの話、球磨の百万長者の慾深い話などは興味深いものであつた。
九月十日[#「九月十日」に二重傍線] 晴、二百廿日、行程三里、日奈久温泉、織屋(四〇・上)
午前中八代町行乞、午後は重い足をひきずつて日奈久へ、いつぞや宇土で同宿したお遍路さん夫婦とまたいつしよになつた。
方々の友へ久振に――ほんたうに久振に――音信する、その中に、――
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……私は所詮、乞食坊主以外の何物でもないことを再発見して、また旅へ出ました、……歩けるだけ歩きます、行けるところまで行きます。
[#ここで字下げ終わり]
温泉はよい、ほんたうによい、こゝは山もよし海もよし、出来ることなら滞在したいのだが、――いや一生動きたくないのだが(それほど私は労[#「労」に「マヽ」の注記]れてゐるのだ)。
九月十一日[#「九月十一日」に二重傍線] 晴、滞在。
午前中行乞、午後は休養、此宿は夫婦揃つて好人物で、一泊四十銭では勿躰ないほどである。
九月十二日[#「九月十二日」に二重傍線] 晴、休養。
入浴、雑談、横臥、漫読、夜は同宿の若い人と共に活動見物、あん
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