『鉢の子』から『其中庵』まで
種田山頭火
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)櫨《はぜ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから7字下げ]
−−
[#ここから7字下げ]
この一篇は、たいへんおそくなりましたけれど、結庵報告書ともいうべきものであります。井師をはじめ、北朗兄、緑平兄、酒壺洞兄、元寛兄、白船兄、樹明兄、そのほか同人諸兄姉の温情によって、句集が出版され、草庵が造作されました。おかげで私は山村庵居の宿題を果すことが出来て、朝々、山のしずけさ人のあたたかさを満喫しております。ここに改めてお礼とお詑とを申し上げる次第であります。
[#ここで字下げ終わり]
一昨年――昭和五年の秋もおわりに近い或る日であった。私は当もないそして果てもない旅のつかれを抱いて、緑平居への坂をのぼっていった。そこにはいつものように桜の老樹がしんかんと並び立っていた。
[#ここから2字下げ]
枝をさしのべてゐる冬木
[#ここで字下げ終わり]
さしのべている緑平老の手であった。私はその手を握って、道友のあたたかさをしみじみと心の底まで味わっ
次へ
全11ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング