はKとBばかりではなかつた。HもSもさう思つてほつとした。彼等はそのまゝそこに立留つた。
「この人達もK、Sまで行くんでせう?」
「それはさうだらう?」
「それは丁度いい道伴れだ……。せめて峠の上までも一緒に行つてもらはう。さうする方がいい。この母子づれと一緒に行けば、あやしいものに出会しても、ことわりをいうてもらうことが出来るから……」
「さうだ、それがいい――」
それには案内者にその旨を言つてもらつておく方が好いといふので、Sにそれを取次がせるやうにしたが、片語なので、それが案内者にもその母子づれにも十分にはつきりと通じたとは思へなかつた。
かれ等は後になつたり先きになつたりして歩いて行つた。時にはその後から一行がぞろぞろと並んで続いて行つたり、時にはその母子づれがあまり足が遅いので、後からそれを押すやうな形になつたり、また時にはそつちが休めばこつちも休み、そつちが歩き出せばこつちも歩き出すといふやうな形にもなつたりした。少くともかれ等はさういふ風にもつれあつて五六町は歩いて行つた。
BとSとはこんな話をした。
「ちよつと好い上さんぢやないか?」
「さうだね」
「色が白いね。
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