れど 誰れかは見つる 彼の姫の其の手をば打揮るを
若しくは かの窓の下に誰が見つる 立つ彼れを
はた 彼れはしも知らるゝや? なべて此のあたりの人に
彼のシャロットの妖しの姫は
ひとり只 麦を刈る男らが 朝まだき麦狩りて
髯のびし大麦のうちに
歌うたふ声を聞くとぞ そは生き/\とひゞくなり
清けくくねり流れゆく かなたなる河辺より
多楼台のカメロットへ
かくて 夜々の月の下に 疲れたる畑つ男が
束ねたる刈穂積みつゝ 風通ふ高き岡べに
其の耳をすまして聞きて ひそやかにつぶやくあり これぞかのシャロットの
あやしの姫と
其の二
そこに 彼の姫は よるも昼も
くしく怪しき綾を織る はでやかなる色したる
予《かね》ても彼れは聞きつ そこともなくさゝやく声を
身の上にまがつひあらんと 若し曾て手をとゞめば
かなたカメロットを見やらんとて
彼れは知らず そのまがつひのいかならんものかをも
されば たゆまずも綾織りて
ほかの心絶えてなし
此のシャロットの妖しの姫は
さて かゆきかくゆき 一の明鏡のうちに
年中つねに其が前にかゝる明鏡のうちに
い
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