き、いかなどは問題にするほどでない。女、子供に任しておけ。
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天麩羅《てんぷら》
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*てんぷら好きは食道楽として誇ったものではない。
*材料、種第一。えびが多いが、えびは養殖でなく天然のもので大きなものは不可。大きいのは見かけだおし。一匹七、八|匁《もんめ》か、それ以下。
*揚げたて第二。てんぷらは揚げてすぐ食べなくては種がよくても味は落ちる。
*油第三。種がよくても油がまずくては不可。
*油は胡麻《ごま》の古い貯蔵品が味がこなれていていい。
*かや油、椿《つばき》油は単独はいけないが、これを三割くらい加えると胡麻油の味は軽くなっておちつく。
*今の東京風のだしは甘からく重くるしいもので味を落とす。昔の天金はうすい甘くないだしだった。
*てんぷらに新鮮なだいこんおろし、これにしょうゆをかけて食べれば俗なだしに優《まさ》る。
*だし、種、油、揚げたてをやかましくいうが、新しい掘りたてのだいこんのおろしを吟味する必要がある。
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鰻《うなぎ》蒲焼《かばや》き
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*うなぎ好きは食通の至ったものではない。うなぎやてんぷらの美味《うま》さは高の知れた美味さだ。これをやかましく喜ぶのは低級な食道楽だ。
*うなぎもあたたかいうちに食べる。往年、上野駅前の山城屋主人なる通人の食べ方を見るに、四枚重ねて片方から食べていったのを見て感心した。
*うなぎは中串以下の大きさが美味い。
*養殖のうなぎはまずくてくさい。
*八幡巻きのうなぎは火箸のようなびりうなぎが適す。
*うなぎをじかに焼く関西風と、関東風の蒸し焼きといずれがよいか。関西風はうまいが堅い。めいめい好きな方をやればいい、一得一失。
*うなぎ酒は蓋《ふた》茶碗にうなぎの焼いたのを入れて熱い酒をかけて、茶碗の蓋をしたまま飲《の》む。この場合は関西風の焼き方にかぎる。
*所詮《しょせん》うなぎは飯の菜で酒の肴《さかな》にはならない。
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刺身
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*わさびを生かして食う方法。この頃のひとにはわさびはあまり好かれないようであるが、刺身の上にのせて、しょうゆをつけて食べるとわさびは利く。し
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