鮪の茶漬け
北大路魯山人

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)流布《るふ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しびまぐろ[#「しびまぐろ」に傍点]
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 たい茶漬けは世間に流布《るふ》され、その看板をかけている料理屋さえ出来てきた。関西ではもちろんのこと、東京でも近来よく見かけるようになった。また、家庭にも侵入して、実際に試みられるようにさえなっている。それなのに、たいより簡単で、美味《うま》いまぐろの茶漬けが用いられていないのは、ふしぎな気がする。
 たいは関西がよく、まぐろは東京がいい。
 その意味からいっても、東京は、たい茶漬けよりまぐろの茶漬けを用いてしかるべきであろう。
 東京に、もし京阪《けいはん》のような食道楽《くいどうらく》が発達していたら、おそらく、今日までまぐろの茶漬けを見逃してはいなかったであろう。そういう私も、まぐろの茶漬けは京都で覚えたもので、東京人から教わったものではなかった。今後の東京人は、たい茶漬けなんて関西の模倣《もほう》をやらないで、堂々と江戸前《えどまえ》のまぐろをもって、たい茶漬けに対す
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