ろうがね。

       豆腐の味

 総じて味のないもの、ぬるぬるしたものや、ぐにゃぐにゃしたものには美味いものが多い。豆腐、こんにゃく、やまいものごときものがみなそうだね。
 中国料理にパイモールというものがあるね。銀耳《インアル》と書くが要するにきくらげだが、これが目方において黄金と匹敵するとまで尊重されている。一匁一円二十銭だから水につけるとぐっと膨《ふく》れるからそれほど高いものでもないが、やはり、この種の美味の範疇《はんちゅう》に属するといえる。北陸のいたわらびなどもそうだが、こういうものの味がわかるようにならんと困るね。
 味は舌だけで味わうものでない。僕等もうんと豊富に食わんといかん。豆腐のごときは殊に舌ざわりが大切だから、生で食う時には絹ごしがいいが、煮て食う場合には、むしろ普通の豆腐がいい。少しざらっとしていても煮ると感じが少し変わってくる。なにか化学的な変化でも起こすのではないか、舌ざわりがとろっとしてくる。それには普通の目の粗い豆腐がいい。いい豆腐というが、普通煮て食う場合には、そこの関係でうまく食えるもんだから、せいぜい食うんだね、ハハハァ……。
 にんにく
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