ことをお勧めいたします。かつおぶしを薄く削るということは、非常に経済的であり、味について効果的でもあります。ごつい鉋でゴツゴツ削るのでは、まったくかつおぶしを殺してしまって、百|匁《もんめ》の物でも五十匁の用にしかなっておらぬというようなことです。こんな矛盾が世間には行われがちではないかと思います。
こぶ出汁のことは、東京では料理屋でさえあまり知らないようです。これは東京には、こぶを使うという習慣がなかったからでしょう。こぶの出汁《だし》は、実に結構なものでありまして、さかなの料理にはこぶ出汁にかぎります。かつおぶしの出汁では、さかなの味が二つ重なるので、どうしても具合の悪いものができます。この味のダブルということがくどい[#「くどい」に傍点]のであります。こぶを出汁に使う法は、古来、京都で考えられたことです。ご存知のように、京都は千年もつづいた首都でありましたから、北海道で産出されたこぶが、はるかな京都という山の中で、実際上の需要から必要に迫られて、こぶ出汁を取るまでに発達したのでありました。
こぶの出汁を取りますのは、こぶを水でぬらしただけで、五分間か三分間、間をおき、こぶの表
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