精選とともに材料の原味を殺さぬこと、その味というものは、科学や人為《じんい》では出来ないものでありますから、それを貴《とうと》ぶのであります。

昆布《こぶ》、鰹節《かつおぶし》――選定および出汁《だし》の取り方・削《けず》り方
 料理には出汁が必要であります。出汁はふつうかつおぶしが使われて、東京では、あまりこぶは使わないようでありますが、出汁には、やはりこの両方とも、うまく使うのがよろしいと思います。それでどういうこぶがよいか、どういうかつおぶしがよいかということをお話しいたさねばなりません。東京ではどういうものですかあまりこぶの出汁を使わないようでありますが、ぜひとも、かつおぶしの出汁とこぶの出汁とは使い分けして使うがよいと思います。こぶにしても、かつおぶしにしても、土産《みやげ》物にもらったとか、あり合わせのというのでは、どうもおもしろくありません。
 かつおぶしはどういうふうにして削るか、どういうふうにして材料を選択するか。かつおぶしとかつおぶしとを叩《たた》き合わすと、カンカンとまるで拍子木《ひょうしぎ》を鳴らすみたいな音でないといけません。虫の入った木のような、ポトポトし
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