うになるのであります。結局、料理というものは、好きでやるのでなくてはだめだということになるのであります。主人がやかましいから一応知っておかなければ、というような了見《りょうけん》では高《たか》の知れたものであります。好きでおもしろく、楽しんで料理をおやりになられるまで進まれるように希望いたします。
終わりに、醤油《しょうゆ》について、ひと言申し上げておきたいと存じます。濃口《こいくち》醤油ではどうもよい料理ができないのです。薄口というのがあります。これは播州竜野《ばんしゅうたつの》でできるのですが、関西では昔から使われています。東京にはこれまでありませんでした。近頃、山城屋には置いています。実際、薄口でなければ、ほんとうによい料理はできません。色はつきませんし、しかも、値段は安く、塩分が多いからよくのびて、経済からいっても大いに安いし、まったく料理には薄口がなければならないといってもよいでしょう。
それから、刃物のことなどもお話しいたしたいのですが、時間もございませんので、簡単にいいますが、どうか刃物もよく切れるのをお使いになっていただきたい。そしてよく切れると、切るのがおもしろい
前へ
次へ
全17ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北大路 魯山人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング