鍋料理の話
北大路魯山人
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)献立《こんだて》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)たれ[#「たれ」に傍点]
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冬、家庭で最も歓迎される料理は、なべ料理であろう。煮たて、焼きたてが食べられるからである。
なべ料理では、決して煮ざましを食べるということはない。クツクツと出来たての料理を食べることが、なによりの楽しみである。だから、なべ料理ほど新鮮さの感じられる料理はない。最初から最後まで、献立《こんだて》から煮て食べるところまで、ことごとく自分で工夫し、加減をしてやるのであるから、なにもかもが生きているというわけである。材料は生きている。料理する者は緊張している。そして、出来たてのものを食べるというのだから、そこにはすきがないのである。それだけになんということなく嬉《うれ》しい。そして親しみのもてる料理といえよう。
しかし、材料が鮮魚、鮮菜という活物《いきもの》が入った上での話である。入れるものがくたびれていたのでは、充分のものはできない。これは、なべ料理にかぎらぬ話であるが、念のため申し添
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