椎茸の話
北大路魯山人
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)櫟《くぬぎ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)採りたて[#「採りたて」に傍点]
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どこの国、いずこの地方に行ってもお国自慢というものがある。歴史、人物、料理、産物など、時に応じ、人によってお国自慢の仕方も違う。生椎茸を例にとるなら、やはり例外でなく、京都の人は「京都の生椎茸はどんなもんだい」と誇りがましくいうし、地方の人も「お国の山の椎茸は必ずしも京都に劣らぬ」と負けてはいない。生椎茸にかぎらず、他のどんな産物でも、時間を少しでも経過したものはそれだけまずくてだめだ。お国自慢をする人は、それぞれみな採りたて[#「採りたて」に傍点]を食べているから、古いのと比べてみて、そういうのだろう。どんな椎茸でも古くなってはだめで、新しいものでなければいけない。
しかし、そうはいっても、大分県あたりで採れる椎茸は実に見事で、日本一と叫んでもいいだろう。大分の椎茸は本当の椎の木にできた椎茸なので、かさが黒くなめらかで、香りや味がすばらしい。関東で賞味している椎茸は、実は椎の木
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