です。天質の持ち味を大切に取り扱うことです。魚にしても、だし昆布とかまたはかつおぶしとかにしても、それらの所有するすべての味は、人造では絶対に出来ませんところの尊いものを持っているのですから、おのおの持ち味を殺さないようにするのが、もっとも肝要な点かと存じます。同じだいこんでも、今しも畑から抜いて来たものは新鮮を失わないように、古くてしなびているものは、それはそれとしてしかるべく処理しなければなりません。この新古材料を、両方同じように処理してはいけないのであります。原料を生かすのも殺すのも、そこにあるのです。
 それにつけても、まず、品物の鑑定が必要であります。すべて品物は素直に見てから買わねばなりません。同じものでも実物を見てから選択しますと、同じ値段で幾層倍もいいものを買うことが出来ます。
 調味料もまた鑑定の必要があります。ただかつおぶし何匁とか、昆布何枚とかいうのではわかりません。どうしたかつおぶしで、どうした昆布で、どうしたところに用うるかということにならないと、うまくはなれないのであります。
 わたしどもの知っているかぎりにおいての家庭では、かつおぶしを削る鉋のよいのを持っ
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