小生のあけくれ
北大路魯山人
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鈍速《スローモー》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)朝夕|起臥《きが》
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山というほどの山ではないが、山中での朝夕|起臥《きが》三十余年、ほとんど社交のない生活を営みながら、小生は時に快速船のように、何事をも進ませずにはいられないクセを持っている。
自慢ではないが、ソレッというと、すべてに超スピードで活動するために、周辺の助け舟は目のまわるようなテンテコ舞いをさせられるが、小生から見るとすべてが鈍速《スローモー》で見ていられない。第一快調を欠いている。その理由をとくと考えてみると、他でもない、小生のようにできるかぎりの睡眠をとっていない。また小生の日常のように栄養を摂《と》っていない。そして碌《ろく》でもない平凡な俗事に頭を煩わすことが多過ぎる。美しずくめばかりを狙《ねら》っている小生の生活とは、どうやら別世界を歩んでいるようだ。
小生のように自由を好むものには、グループに加わることはとうていできるものではない。共同画業、共同芸業などまったく縁遠い。
日常の食
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