、冬になると、焼きはぜなどよく贈られる家庭もあろうが、焼きはぜをだしに用いると、特殊の風味が出て楽しめる。
さて、いちばん肝要なのは、餅の焼き方である。昔から狐《きつね》色に焼くのを最上としておったようだが、ところどころ濃く、ところどころ狐色に丁度|鼈甲《べっこう》の斑《ふ》を思わせるように焼くのが理想的である。そして、餅の堅い、やわらかいの程度によって、火の加減をしないと、中身が堅いのに表面ばかり焦げたり、白くしなしなしてしまったりする。
雑煮のコツは、餅の焼き方にあるといってよいと思う。また、不細工に大きな餅のはいっているのはおもしろくない。ことに朝から屠蘇《とそ》機嫌でいるところへ大きいのを出すのは気が利かない。
料理屋で出す小型マッチ箱ぐらいの大きさが、見た目の感じがよい。でも、客次第で餅の大きさも加減したらよい。若い者たちには多少体裁が不格好でも、大きいのを入れた方が歓迎されよう。出す相手と場合に応じて、それ相応のもてなしをすることは、単に雑煮だけにかぎらず、何事においても必須条件である。
白味噌の雑煮なども、変わっていてうまいものである。それから、のりは良質のもの―
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