いごちそうというのは、上手な料理法ということは第二義で、実に材料だけだ、ということである。中国では料理の功は材料が六、料理の腕前が四といわれたが、日本は中国と違って、料理材料が段違いにすぐれているから、材料の功が九、料理の腕前はその一しか受け持っていなかった。要は材料の質が中国に勝っているからである。
甘い料理が好きなひともあり、からい料理の好きなひともあるが、甘いからいのおいしさではなく、ごちそうの味の「九」までを受け持っている材料のおいしさのことを話したい。
うまいすきやきは、うまい牛肉がもとであり、うまいそばはそば粉の品質のよさであろう。うまいスパゲッティは小麦粉の良質にある。
えびといってもいろいろある。同じえびでも、本場のえびは大分味が違う。なるほどと思うまでにうまい。場違いのえびを、いくら巧みに料理しようと工夫しても、本場の手頃のえびにはかなわない。
このように、各地各国には、それぞれの土地においしいものがあるに違いない。各人はせめて自分のいる場所の近くで、魚ではなにがいちばんおいしいか、また、同じ魚を手にしてもその魚のいちばんおいしいところはどの部分か、ということ
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