どじょうの良否を見分けるには、まず卵に着眼し、卵の絶無のものを第一とし、以下なるべくこれの少ないものを選ぶべきである。卵の多いものは、肝心の肉付きが少ない。どじょう割《さ》きは、素人《しろうと》の手に負えぬものとなっているが、それは急所に錐《きり》が打ち込めないからで、その急所は目の付け根とおぼしいところの背骨にある。この個所《かしょ》に錐を打てば、どじょうは一遍に参ってしまう。
小どじょう、大どじょうともに味噌汁《みそしる》に丸ごと入れることが一番|美味《うま》いとされているが、十人中九人までは、丸ごとの姿を見ただけで、ぞっとしてしまうから、これはいかもの食い向きとしておくべきであろうか。四、五寸のものを丸ごと照り焼きにして、皿に盛る際、頭と尾を切り落とし、棒状形にして膳《ぜん》にのぼす。これならば、家庭で試みてもよいものである。東京では埼玉の越ヶ谷辺《こしがやあたり》の地黒《じぐろ》というどじょうが上物《じょうもの》で大きく、以前、うなぎの大和田《おおわだ》あたりで盛んに蒲焼きにして、「どかば」と称して、一時人気を呼んだものである。
どじょうなべの要点はだしで、表側の卵を汚
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