一癖あるどじょう
北大路魯山人
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)美味《うま》くて
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)日本橋通一丁目|辺《あたり》
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どじょうなべ。美味《うま》くて、安くて、栄養価があって、親しみがあり、家庭でも容易にでき、万事文句なしのもの。ただし、貴族的ではない。これがどこへ行っても歓迎を受けているのは、もっともな話である。
なべものは一般に冬のものと決まっているところへ、こればかりは夏のものであることも、大方《おおかた》の興《きょう》を呼ぼう。東京では、どじょうなべというより「柳川《やながわ》」というほうが通りがいい。なぜ柳川という名称が生じたか。
古老の話によると、幕末のころ、日本橋通一丁目|辺《あたり》に「柳川屋」という店があり、ここでかつて見たこともない「どじょうなべ」なるものを食わした。幸いそれが当たって、江戸中の評判となり、いつとはなしに、どじょうなべのことを柳川というようになった。これが柳川《やながわ》の名称の起こりだという。そんなところから、通人《つうじん》は柳川で一杯などとシャレるに至った
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