れがいつとはなしに何千何百とたまってくる。そうなると、その処分に困ってくる。腐ってもあゆだとすましてはいられない。そこで捨てるよりはましだというわけで、これを抜け売りに出す。こんな次第でその際には五厘のあゆ、三厘のあゆというのができる。まさか三厘や五厘でもあるまいが、二銭か三銭で相場が立ったらしい。
 もちろん、わたなどないにきまっているが、ともかくあゆ入り弁当が十五銭ででき上がったのである。さすが東京は広いと舌を巻かざるを得なかった次第である。



底本:「魯山人の美食手帖」グルメ文庫、角川春樹事務所
   2008(平成20)年4月18日第1刷発行
底本の親本:「魯山人著作集」五月書房
   1993(平成5)年発行
初出:「星岡」
   1935(昭和10)年
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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