皇海山紀行
木暮理太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)訳《わけ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一体|何処《どこ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]

 [#…]:返り点
 (例)土也以[#二]山巓[#一]為[#レ]界
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 降りがちな天候は、十一月に入ってもからりと晴れた日は続かなかった。ことに土曜から日曜へかけてはよく降った。この意地悪い雨のために出鼻をくじかれて、出発はもう予定より三週間も遅れてしまった。これがもし紅葉見物を兼ねての旅であったならば、目的の一半は既に失われた訳《わけ》であるが、皇海《すかい》山に登ることが主眼であったから、秋の旅とはいえ、紅葉の方はどうでもよかったのである。ただ余り寒くなって山に雪が来ては困ると思った。
 皇海山とは一体|何処《どこ》にある山か、名を聞くのも初めてであるという人が恐らく多いであろう。それもそのはずである。この山などは今更日本アルプスでもあるまいという旋毛《つむじ》まがりの連中が、二千米を超えた面白そうな山はないかと、蚤取眼
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