なぎ屋の裏口からこッそりはいって来て、立ち聴きしたと、さ」――では、先夜の僕がゆうべの青木になったのだ。また、うわばみの赤い舌がぺろぺろ僕の目の前に見えるようだ。僕はこれを胸に押さえて平気を装い、
「それがつらいのか?」
「どうしても、疑わしいッて聴かないんだもの、癪にさわったから、みんな言っちまった――『あなたのお世話にゃならない』て」
「それでいいじゃアないか?」
「じゃア、向うがこれからのお世話は断わると言うんだが、いいの?」
「いいとも」
「跡の始末はあなたがつけてくれて?」
「知れたこッた」と、僕は覚悟した。
 こういうことにならないうち、早く切りあげようかとも思ったのだが、来べき金が来ないので、ひとつは動きがつかなくなったのだ。しかし、もう、こうなった以上は、僕も手を引くのをいさぎよしとしない。僕は意外に心が据った。
「もう少し書いたら行くから、さきへ帰っていな」と、僕は一足さきへ吉弥を帰した。

     一八

 やがて井筒屋へ行くと、吉弥とお貞と主人とか囲炉裡《いろり》を取り巻いて坐っている。お君や正ちゃんは何も知らずに寝ているらしい。主人はどういう風になるだろうと心
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