拾って出て行った。
 菊子も僕を置いて二階へあがった。
 二階では、――
「さァ、絶体だ」
「出る、出る!」
「助平だ、ねえ――?」
「降りてやらア」
「行けばいいのに――赤だよ」
「そりゃ来た!」
「こん畜生!」
 ぺたぺたと花を引く音がしていた。
 菊子がまだ国府津にいた時、僕をよろこばせようとして、
「帰ったら、うちの二階が明いてるから、隔日に来て、あすこで、勉強しなさいよ」と言った、その二階がいつもあのざまなのだろう。見す見す堕落の淵《ふち》に落し入れられるのであった。未練がないだけ、僕は今かえって仕合せだと思ったが、また、別なところで、かれらの知らないうちにああいう社会にはいって、ああいう悪風に染《そ》み、ああいう楽しみもして、ああいう耽溺のにおいも嗅いで見たいような気がした。僕は掃《は》き溜《だ》めをあさる痩せ犬のように、鼻さきが鋭敏になって、あくまで耽溺の目的物を追っていたのである。
 やがて菊子が下りて来て、
「お父さんはお花に夢中よ」と言う。まだ多少はしおらしいところがあって、ちょッと顔を出せとでも言って来たものらしい。会いたくないと言ったのだろう。僕は、かのうなぎ屋
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