樹は、二本とも、葉の大きい、きざみの淺いイタヤもみぢのやうであつた。
 宿へ歸つてから、渠に聖目《せいもく》を置かせて碁を七八番ばかり打つて、一緒に食事をした。そして互ひに別室へ別れてから、僕は中央公論の續きを書き初めて、午前の一時半まで起きてた。川水の遠い音にまじつて、雨がさアと降つてゐるのが近く聽えた。



底本:「現代日本紀行文学全集 東日本編」ほるぷ出版
   1976(昭和51)年8月1日初版発行
※1919(大正8)年11月記
入力:林 幸雄
校正:松永正敏
2004年5月1日作成
青空文庫作成ファイル:
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