とがいろいろと困難の事情が多いので、ジャーナリズムとしては一番痛心なときだ。始終ビクビクして神経の捕虜となっている編輯者を見るにつけ、これで、どうして偉大な民族となるべきものへの糧となり得るものがつくられ得ようか? 永遠性への文化の礎柱を建立しなければならぬ社会的任務をどうして遂げ得られようかと考えさせるのだ。
 ガッチリした角力をとるには、ガッチリした体格と力量とを絶対の必要条件とするごとく、民族の偉大性を希求するならば、その成長を自由ならしむべき方途に出でなければならぬのだ。

 私は、操觚者として過去三十年間くらしてみたが、この一年ほど言論の自由や、発表の問題について頭をいためたことはない。
[#地から1字上げ](昭和九年四月号『改造』)



底本:「出版人の遺文 改造社 山本実彦」栗田書店
   1968(昭和43)年6月1日第1刷発行
   1969(昭和44)年2月11日第2刷発行
初出:「改造」
   1934(昭和9)年4月号
入力:鈴木厚司
校正:染川隆俊
2009年4月18日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全5ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
山本 実彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング