と熊《くま》とは、折《をり》ふし、こんな悲《かな》しい話《はなし》をしてはおたがひの身《み》の不幸《ふしあはせ》を嘆《なげ》きました。
 他《ほか》の動物《どうぶつ》も、みんな同《おな》じやうに泣《な》いてばかりゐました。實《げ》に、動物園《どうぶつゑん》は動物《どうぶつ》の監獄《かんごく》でありました。
 唯《たゞ》、狡猾《ずる》い猿《さる》だけは、こうして毎日《まいにち》何《なん》の仕事《しごと》もなく、ごろごろと惰《なま》けてゐても、それでお腹《なか》も空《す》かさないでゆかれるので、暢氣《のんき》な顏《かほ》をして、人間《にんげん》の子どもらの玩弄品《おもちや》になつて、いつもきやツきやツと騷《さわ》いでゐました。


 頬白鳥

 ものぐさ百姓《ひゃくせう》がある朝《あさ》、めづらしく早起《はやお》きして、畑《はたけ》で種蒔《たねま》きをしてゐました。それを頬白鳥《ほゝじろ》がみつけて
「おぢさん、今日《こんにち》は」といひました。
 百姓《ひゃくせう》はねむそうな眼《め》を上《あ》げてみました。
「おお、誰《だれ》かとおもつたらお前《めえ》かえ。お前《めえ》さんもはやいね」
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