鴉《からす》が
「なんだと、えツ、やかましいわい。此《こ》のおしやべり小僧《こぞう》め!」
「でもね、われもひとも生きもんだ[#「われもひとも生きもんだ」に傍点]、つてことが……」
「ええ、うるせえ」と云《い》ふよりはやく飛《と》び掛《かゝ》りました。けれど四十|雀《から》はもうどこにも見《み》えません。ちええ。そればかりか、折角《せつかく》のごちさう[#「ごちさう」に傍点]はとみれば、その間《あひだ》に、これはまんまと、穴《あな》へ逃《に》げこんでしまつてゐるのです。そして穴《あな》の口《くち》から頭《あたま》をだして
「おい、ここだよ」


 仲善し

 馬方《うまかた》と馬方《うまかた》が喧嘩《けんくわ》をはじめました。砂《すな》ツぽこりの大道《だいどう》の地《ぢ》べたで、上《うへ》になつたり下《した》になつたり、まるであんこ[#「あんこ」に傍点]の中《なか》の團子《だんご》のやうに。そして双方《そうほう》とも、泥《どろ》だらけになり、やがて血《ち》までがだらだら流《なが》れ出《だ》しました。
 一人《ひとり》の方《ほう》の馬《うま》が「またはじまりましたね」と言《い》ふと
 他
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