》り固《かた》い。いくら煮《に》ても石《いし》のやうで食《た》べられません。お鍋《なべ》から出《だ》して、こんどは火《ひ》で燒《や》いてみました。不相變《あいかはらず》です。いよいよ固《かた》くなるばかりでした。
 遂々《とう/\》、お上《かみ》さんは腹《はら》を立《た》てて、それをすつかり裏《うら》の竹藪《たけやぶ》にすてました。
 すると芋《いも》が
「ざまあみやがれ、慾張《よくばり》めが。俺《おい》らが怒《おこ》つて固《かた》くなると、こんなもんだ」
 その翌日《あくるひ》、こんな噂《うはさ》がぱつと立《た》ちました。昨日《きのふ》の乞食《こじき》のやうなあの坊《ぼう》さんは、あれは今《いま》、生佛《いきぼとけ》といはれてゐるお上人樣《しやうにんさま》だと。
 お上《かみ》さんはぶつたまげてしまひました。けれど「あんなものをあげないで、よかつた」とおもひました。そして裏《うら》の竹藪《たけやぶ》にでてみますと、捨《す》てられたその芋《いも》は青々《あを/\》と芽をふいてゐるではありませんか。


 おやこ

 馬《うま》の母仔《おやこ》が百姓男《ひやくせうをとこ》にひかれて町《ま
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