》のところへ尋ねて来た事、これは都《みやこ》新聞の人に話しましたから、彼方《あっち》へ出たのを、またお話しするのもおかしいから止《よ》します。
▲死んだ亡父《おやじ》は、御承知の通《とおり》、随分《ずいぶん》幽霊ものをしましたが、ある時|大磯《おおいそ》の海岸を、夜歩いて行くと、あのザアザアという波の音が何となく凄いので、今までに浜辺の幽霊というものをやった事がないからいつか遣《や》ってみたいものだと言っていました。その事を、その後《のち》不図《ふと》御贔負《ごひいき》を蒙《こうむ》る三井養之助《みついようのすけ》さんにお話すると、や、それはいけない、幽霊の陰《いん》に対しては、相手は陽《よう》のものでなくてはいけない、夜の海は陰《いん》のものだから、そこへ幽霊を出しては却《かえっ》て凄みがないと仰《おっしゃ》いました。亡父《おやじ》はなるほどと思って、浜辺の幽霊はおくら[#「おくら」に傍点]になってしまいました。
▲話は一向《いっこう》纏《まと》まらないが堪忍《かんにん》して下さい。御承知の通《とおり》、私共は団蔵《だんぞう》さんを頭《あたま》に、高麗蔵《こまぞう》さんや市村《いちむ
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