子供の霊
岡崎雪聲
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)丁度《ちょうど》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二三日|後《のち》
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私が十三歳の時だから、丁度《ちょうど》慶応三年の頃だ、当時私は京都寺町通《きようとてらまちどおり》の或る書房に居たのであるが、その頃に其頃《そこ》の主人夫婦の間に、男の子が生れた。すると奇妙なことに、その子に肛門がないので、それが為《た》め、生れて三日目の朝、遂《つい》に死んでしまった。やがて親戚や近所の人達が、集《あつま》って来て、彼地《あちら》でいう夜伽《よとぎ》、東京《とうきょう》でいえば通夜《つや》であるが、それが或《ある》晩のこと初《はじま》った。冬の事で、四隣《あたり》は至《いたっ》て静かなのに、鉦《かね》の音《ね》が淋しく聞《きこ》える、私は平時《いつ》も、店で書籍が積んである傍《かたわら》に、寝るのが例なので、その晩も、用を終《しま》って、最早《もう》遅いから、例の如く一人で床《とこ》に入った。夜が更《ふ》けるにつれ、夜伽《よとぎ》の人々も、寝気《ねむけ》を催《もよお》したものか、鉦《かね
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