死神
岡崎雪聲
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)放歌《ほうか》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)近頃|大分《だいぶ》
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往来で放歌《ほうか》をすることは、近頃|大分《だいぶ》厳《やか》ましくなったが、或《ある》意味からいうと許してもよさそうなものだ、というのは、淋しい所などを夜遅く一人などで通る時には、黙って行くと、自然|下《くだ》らぬ考事《かんがえごと》などが起《おこ》って、遂《つい》には何かに襲われるといったような事がある、もしこの場合に、謡曲《うたい》の好きな人なら、それを唸《うな》るとか、詩吟《しぎん》を口吟《くちずさ》むとか、清元《きよもと》をやるとか、何か気を紛《まぎ》らして、そんな満《つま》らぬ考《かんがえ》を打消《うちけ》すと、結局《けっく》夢中にそんな所も過ぎるので、これ等《ら》は誠《まこと》によいことだと自分は思う。
明治十一年のこと、当時私は未《ま》だ廿五《にじゅうご》歳の青年であったが、東京《とうきょう》へ上京して四年後で、芝《しば》の花園橋《はなぞのばし》の直《す》ぐ近所の鈴木《すずき》某氏の門弟で
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