不吉の音と学士会院の鐘
岩村透
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)渋谷《しぶや》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今|遺憾《いかん》だ。
−−
昼も見えたそうだね。渋谷《しぶや》の美術村は、昼は空虚《からっぽ》だが、夜になるとこうやってみんな暖炉《ストーブ》物語を始めているようなわけだ。其処《そこ》へ目星を打って来たとは振《ふる》っているね。考えてみれば暢気《のんき》な話さ。怪談の目星を打たれる我々も我々であるが、部署を定めて東奔西走も得難いね。生憎《あいにく》持合《もちあわ》せが無いとだけでは美術村の体面に関《かか》わる。一つ始めよう。
しかし前から下調《したしらべ》をしておくような暇《いとま》が無かったのだから、何事もその意《つもり》で聞いて貰わなければならない。あるには有る。例えば羅馬《ローマ》という国だ。この国は今言うような趣味の材料には、最も豊富な国と言っていい、都鄙《とひ》おしなべて、何か古城趾《こじょうし》があるとすれば殊《こと》に妙であるが、其処《そこ》には何等《なにら》かの意味に於いて、何等《なにら》かの怪《かい
次へ
全7ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岩村 透 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング