るが、彼等は一向《いっこう》平気で、少しもそこから去らないから、仕方なしにまた汽車を動かして、其処《そこ》を通って行《ゆ》くと、最早《もはや》彼等の姿は、決して人の眼に映らないが、何処《どこ》からともなく、嫌な声で、多くの人々の、悲鳴するような叫喚《さけび》が、山に反響して雑然《ざわざわ》と如何《いか》にも物凄く聞《きこ》えてくるので、乗客は恐ろしさに堪《た》えず、皆その窓を閉切《しめき》って、震えながらに通ったとの事である。その当時は、よくこんな出来事があったものだと、私は或《ある》米国人から聞いたのである。
底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房
2007(平成19)年7月10日第1刷発行
底本の親本:「怪談会」柏舎書楼
1909(明治42)年発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2008年9月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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