夜釣の怪
池田輝方
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)祖父《じじい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五六|間《けん》
−−
私の祖父《じじい》は釣《つり》が所好《すき》でして、よく、王子《おうじ》の扇屋の主人や、千住《せんじゅ》の女郎屋の主人なぞと一緒に釣《つり》に行きました。
これもその女郎屋の主人と、夜釣に行った時の事で御座《ござ》います。
川がありまして、土堤《どて》が二三ヶ所、処々《ところどころ》崩れているんだそうで御座《ござ》います。
其処《そこ》へこう陣取りまして、五六|間《けん》離れた処《ところ》に、その女郎屋の主人が居る。矢張《やは》り同じように釣棹《つりざお》を沢山やって、角行燈《かくあんどう》をつけてたそうです。
祖父《じじい》が釣《つり》をしていると、川の音がガバガバとしたんです。
それから、何だろうかと思っていると、旋《やが》てその女郎屋の主人が、釣棹《つりざお》を悉皆《すっかり》纏《まと》めて、祖父《じじい》の背後《うしろ》へやって来たそうです。それで、「もう早く帰ろう。」というんだそうです。
次へ
全4ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
池田 輝方 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング