「ああしんど」と言ったんだそうで御座《ござ》いますよ。
屹度《きっと》、曾祖母《おおばあ》さんは、炬燵《こたつ》へ煖《あた》って、眼鏡を懸けて、本でも見ていたんで御座《ござ》いましょうね。
で、吃驚《びつくり》致しまして、この猫は屹度《きっと》化けると思ったんです。それから、捨てようと思いましたけれども、幾ら捨てても帰って来るんで御座《ごぎ》いますって。でも大人《おとな》しくて、何《なん》にも悪い事はあるんじゃありませんけれども、私の祖父《じじい》は、「口を利くから、怖くって怖くって、仕方がなかった。」って言っておりましたよ。
祖父《じじい》は私共の知っておりました時分でも、猫は大嫌いなんで御座《ござ》います。私共が所好《すき》で飼っておりましても、
「猫は化けるからな」と言ってるんで御座《ござ》います。
で、祖父《じじい》は、猫をあんまり可愛《かあい》がっちゃ、可《い》けない可《い》けないって言っておりましたけれど、その後《ご》の猫は化けるまで居た事は御座《ござ》いません。
底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房
2007(平成19)
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